先輩・恩師との出会いで研究者に
百聞は一見に如かず。生体分子の挙動や生体反応を、視覚情報に置き換えて観察することができる分子イメージングは、最も説得力のある生体解析技術である。磁気共鳴イメージング(MRI)の造影剤を用いた独自の分子イメージング技術で注目されているのが、東京科学大学総合研究院化学生命科学研究所の岡田智准教授だ。
岡田准教授は 大阪大学工学部応用自然科学科を卒業し、乳酸菌の研究を続けるべく、大学院へと進学した。修士1年の途中から化学をやりたいという気持ちが強くなり、当時の指導教官に相談し、研究室を変わることになる。これが岡田准教授の研究者人生の大きなターニングポイントとなった。
「大学院に入った直後、先生の講義に衝撃を受けました」岡田准教授は、当時の印象を語り始めた。“先生”とは、富山県立富山中部高校の先輩であり、大学院修士・博士課程の指導教員となった大阪大学大学院工学研究科生命先端工学専攻の 菊地和也教授のことである。「説得力のある話にビビッときて、菊地先生のもとでイメージング研究を行いたいと思いドクターコース進学を決めました」岡田准教授は笑顔で続けた。菊地研ではMRI造影剤の基礎研究開発を行い、現在の礎となっている。「MRIに関する研究を心からやりたかった!という訳ではなく、提案されたテーマをなんとなく受け入れたというのが正直なところ。菊地研の看板であった蛍光イメージングの方が見た目も派手で魅力があったが、あまり聞き慣れなかったMRIというワードがM1の途中から移ってきた自分に向いている気がした」そう言って照れて笑った。
大学院生として研究をしている2008年、下村脩博士らが「緑色蛍光タンパク質 (GFP) の発見と開発」でノーベル化学賞を受賞し、バイオイメージングの注目度が増したことも岡田准教授の研究者魂をより一層、熱くさせた 。