人との出会いと研究
化学物質の状態・量を計測することは、人間の健康維持だけでなく環境保全や安全管理など様々な場面で必要となり、人間社会の隅々に浸透している。そして、化学・生物学・物理学などの幅広い分野を股にかけ、新しい計測技術の開発することで人類の発展に貢献している多くの研究者がいる。東北大学多元物質科学研究所の福山真央准教授は、ナノ・マイクロメートルサイズの空間とその界面を駆使して、新たな分析手法の開発に携わっている若手研究者の一人である。
福山准教授は東京大学大学院工学部応用化学科を卒業し、東京大学生産技術研究所の火原彰秀准教授(当時:写真右、現東京工業大学理学院化学系 教授)の研究室へと進学し、修士・博士の5年間を過ごした。福山准教授は当時の火原准教授について「火原先生は博学な先生で、どの分野のことについても適当なことを言うとすぐバレるんです。」と評した。「ケミストリー・サイエンスだけでなく文学などどこを取ってもよくご存じでした。修士1年の頃、カミュのペストについて私が適当なことを言ったら、「カミュは絶対そんなこと書かないし!」と一発でバレました。とても感銘を受け、こんなにものをよく知っている先生が分析化学の研究者をやっているということは、分析化学という研究分野は楽しいのだろうなあと思いました。この先生にちゃんと5年間師事して研究を学ぼうと思いました。」と懐かしそうに話した。
学位を取得した福山准教授は、東京工業大学にて学振特別研究員(PD)として約1年の時を過ごした。その後、京都工芸繊維大学では大学戦略推進機構系においてテニュアトラック助教となった福山准教授は、博士課程の半ばに気が付いた”自然乳化”についての研究を続けることになった。助教の自由に研究させてくださるスーパーバイザーの前田耕治教授の教育・研究方針を、福山准教授は感謝の意を込めて”自由の刑”という言葉を使って表現した。「この時の悩みや足掻きがあったからこそ今がある。自分が好きな実験・現象と、研究の目的・展望を一致させることができた」と振り返る。
その後、再び火原教授とのご縁があり、東北大学多元物質科学研究所にて教授・助教として再びタッグを組むこととなる。